経動脈的微細血管塞栓術(TAME)は、カテーテルを使ったに新しい低侵襲な運動器カテーテル治療法です。
運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。運動器はそれぞれが連携して働いており、どのひとつが悪くても身体はうまく動きません。
超高齢社会を迎えて、平均寿命と健康寿命(病気や痴呆、衰弱などで要介護状態となった期間を平均寿命から差し引いた寿命)には差が生まれ、運動器機能が長寿に追いつけない時代となってきました。
その原因のひとつに慢性的な疼痛があります。特に高齢の方には運動器の疼痛が最も多いという報告がされています。
運動器の慢性的な疼痛への治療法としては、保存的治療(薬物療法・理学療法)や手術療法が従来から行われています。
薬物療法には、消炎鎮痛剤や神経障害を改善する薬など症状改善のための薬剤が用いられています。
理学療法は全身の主に筋肉の緊張や姿勢などにアプローチすることで疼痛症状を改善させることを目的として広く行われています。
ただし、これらの一般的な保存的治療では「満足に改善しなかった」と答える人が非常に多いことも明らかになっています。
また、薬物療法などの保存的治療に抵抗性を示す場合には、疼痛の原因となっている組織にメスを入れて取り除く外科的手術が施行されています。
しかし、高齢の方にとって外科的手術は侵襲度が高く施行できないケースも少なくありません。
Interventional Radiology (IVR)は、様々な分野でどんな方にも施行可能な低侵襲治療として期待されています。
そのIVRの技術を活用して、カテーテルという細い管を使って疼痛部分にできてしまっている異常な血管に塞栓物質を流し塞ぐことにより、除痛を得る治療法が、慢性疼痛に対する新たな治療法として最近行われるようになり、国内外で普及してきています。
奈良医大放射線・核医学科・IVRセンターでは様々なIVRを日本でいち早く導入して積極的に行っており、様々な疾患に対して世界でもトップクラスの良好な成績をあげています。
また、この慢性疼痛に対するIVRは運動器に関する疼痛すべてが対象であり、高齢の方に限らず、テニス肘やゴルフ肘、五十肩など高齢の方以外が患いやすい痛みも治療の対象となります。
レントゲンやCT、MRIを必要に応じて撮影し病変を確認します。
その結果、必要があれば当院の整形外科・四肢外傷センターを受診していただく場合もあります。