頸動脈狭窄症
動脈硬化で血管が細くなる病気:頚動脈狭窄症とは?
高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などのリスクファクターによって、全身の動脈硬化、動脈の狭窄や閉塞(狭くなったり、詰まってしまったりすること)が起こりやすくなります。頚動脈狭窄症とは、脳に血液を送る大切な頚動脈に、脂質などを含んだ動脈硬化の固まりであるプラークというものが出来てしまい、血管が狭くなった状態のことです。この状態が続くことで、脳に十分な血液が送れなくなったり、細くなった部分に出来た血の固まりやプラークの一部がはがれて脳血管に入り込んだりするため、手足の麻痺や言語障害といった脳梗塞の症状を起こしてしまうことがあります。無症状であっても狭窄の度合いが強いと、将来脳梗塞を生じる危険性が高いことが知られています。昔は欧米人に多い病気でしたが、日本人の食生活の欧米化により、徐々に増えている病気の一つです。
検査
手足の麻痺や言語障害などの症状がある方や、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などのリスクファクターを有する方は、頸動脈狭窄症の検査を受けることをお勧めします。
頚動脈狭窄症の診断方法として一番負担の少ない検査方法は、頚動脈超音波検査です。頸部の皮膚表面から超音波をあてることで、血管壁や血流の状態を評価します。血管壁の動脈硬化性変化の程度や、粥腫(プラーク)、血栓形成、潰瘍形成の有無などが観察されます。頸動脈を流れる血液の速度や量を測定し、頸動脈狭窄の程度を評価することもできます。
さらに詳しく調べる方法としては、MRA検査、CT angiography (CTA)検査、脳血管撮影検査などがあります。
治療方法
治療法は内科的治療と外科的治療があり、狭窄が軽度であれば内科的治療のみで保存的に経過観察できる場合がありますが、狭窄の度合いが強い場合には外科的治療を行うことが望ましいと考えられています。外科的治療には手術治療(頸動脈内膜剥離術)と血管内治療(頸動脈ステント留置術)があります。当院では頸動脈ステント留置術の症例が年々増加しており、現在年間40-50例程度となっています。
頸部内頸動脈狭窄症 頸動脈ステント留置術
頚部内頚動脈ステント留置術は、狭くなった血管の内側から金属の編み目でできた筒型の内張り(ステント)を入れて狭い血管を拡げる治療法です。すでに心臓や手足の血管では広く行われてきた治療法で、頚動脈に対しても平成20年4月から医療保険の適応が認められています。頚部頚動脈ステント留置術は、血管の内側から治す“血管内治療”のため、従来の大きな皮膚切開を必要とする手術に比べれば、患者さんの体への負担は少なくてすみ、高齢者やいろいろな合併症を持った方にも負担を少なくして行うことができます。術後の安静期間や入院期間も短いのが特徴です。
具体的には、足の付け根から直径2~3mmの細い管(カテーテル)を血管の中へ入れて頚動脈まで進め、このカテーテルの中を通して狭くなった血管へステントを誘導して留置します。また、治療時には、血流を確保しつつ、血栓やプラークなどの塞栓物質の脳への流入を防ぐ網傘型のフィルター付きプロテクションデバイスを用います。本邦では、平成20年4月に厚生労働省によって保険適応が受けられるようになりました。
当院では脳神経外科との協力のもと、治療を行なっております。治療を受けるかどうかは、担当医とよく相談し、治療の限界や危険性についても十分に納得された上で決めて下さい。
症例
頸部内頸動脈狭窄症 ステント留置術
治療前 |
フィルター留置 |
ステント留置後、風船で拡張 |
治療後 |
●専門外来
明珍 薫 医師 |