海外留学から得たもの ドイツアーヘン大学に留学して 市橋 成夫 (平成21年入局)
吉川公彦教授のご厚意の元、2013年7月に1ヶ月ニューヨーク州Albany Medical Center血管外科に臨床見学、その後15年9月までの2年間ドイツアーヘン大学に基礎研究留学をさせていただいた。学生時代から漠然といつかは海外留学してみたいとの思いは持っていたが、医師6年目までは海外留学のチャンスはゼロで、7年目に奈良医大放射線科に入局してから、突如としてチャンスが舞い降りた。アーヘン大学の研究室を統括するSchmitz-Rode教授は吉川教授がアメリカにご留学されていた時からのご友人であり、そのご縁からアーヘン大学への留学が決まったのである。
住居はアーヘン大学に2009-2011に留学された田中利洋先生から引き継いだもので、ドイツらしい緑に囲まれた閑静な住宅街にあるマンションだった。マンションから大学病院へは毎日自転車通勤をしていたが、通勤路の周りは羊が放し飼いにされている草原だった。映画に出てきそうな美しい景色を眺めながら自転車通勤をしていたのが懐かしい。
奈良医大ではvascular interventionを担当していたので、ドイツではステント開存率の向上を目指したバイオステントの開発を基礎研究テーマとしていただいた。日本では細胞を扱った基礎研究の経験がゼロであり、慣れない仕事環境、英語でのcommunicationなど研究を進めるのに苦難の連続であった。日本での臨床の仕事と、ドイツでの研究では時間軸が全く異なり、慣れない基礎研究で不成功に終わることも多く、ストレスフルな時間を送った。しかしドイツの友人や同僚のサポートもあり、最終的にはなんとか論文として形に残すことができた。
日常生活ではトラブルにも見舞われた。イタリアローマ旅行中には携帯電話を盗まれた。ドイツで購入した愛車が故障した。インターネット業者を装った詐欺師に偽の契約をさせられ、警察のお世話にもなった。今となっては全て笑える良い思い出である。
留学生活が充実するか、happyであるかは個人の考え方、vitality以外にも、留学先の仲間やbossにも大きく依存するように思う。日本では先輩/上司が後輩/部下の面倒を見るという文化が根付いているが、ドイツではそういう文化はなく、自分が立案、遂行しなければ、何も進まない。留学での研究成果は自分の満足できるレベルまで到達はできなかったが、海外で仕事をする厳しさを体験し、自分自身や日本の医療界の立ち位置が理解できたし、家族との2年間の海外生活は掛け替えの無いものであり、家族全員がhappyであったことには間違い無い。特に子供達の語学の上達には眼を見張るものがあった。それだけでも留学の価値はあったと思っている。若手Drには、機会があれば是非手を上げて、留学を経験していただきたい。むしろ留学のチャンスを自分から掴みにいってほしい。一回きりの人生、楽しんでこそ価値があるのだから。
<お気に入りのランニングコース>
<旅行先のスイスにて>
<ドイツ訪問された吉川教授、田中先生と>
<クリスマスマーケット>